愚者の能書き

愚か者が愚かなりに考えたことを記録する

相棒15 第8話 「100%の女」 私的感想ツイートまとめ


あ、公開するの忘れてた……。
まあいいか、個人の備忘録だし。
というわけで、今更ネタバレとかいうのもどうかと思いますが、以下ネタバレを含みます。
先を読まれる方はそのつもりでどうぞ。








今回の事件は、起きた殺人事件そのものの解決、犯人の逮捕が焦点ではなく、その後の裁判における一つの証言をめぐる物語です。
被疑者が逃亡する姿を目撃したのは中学校の若い女性教諭でした。
彼女の証言が決め手となって被疑者が逮捕されたわけですが、その目撃証言が、警察で行ったものと、法廷で示されたものとで若干違っていました。
その理由が上記ツイートの「憎からず思っていた」からでした。

教諭は事件発生の前、担任する男子生徒と2時間近く、ふたりきりで過ごしていました。
今日は誕生日だが、親は夜勤で祝ってくれない、寂しい、というわけで、男子生徒の嘘の自殺予告によりカラオケボックスの一室にまんまと呼び出されてしまったわけです。
もうゲスい想像しかできませんね。
ちなみにこの男子生徒、その後は誰もいない教室で先生と2人きりの時に先生の口紅を褒めるという痛い行動に出ているところを、視聴者と特命係に目撃されています。
この時、先生、ひねデレた男子生徒の賛辞を鼻で笑うこともなく無言で受け入れていました。
マンガであれば頬を赤く染めていたことでしょう。
まあ、マンガじゃないので、赤面することもないのですが、そこら辺の色々を、後々右京さんが一言、先生がその男子生徒を「憎からず思っていた」とセリフで言ってしまうわけです。
そりゃあドラマとしてどうなのよ、というのが上記のツイートでした。

殺人事件が発生、犯人を女性教諭が目撃する。
女性教諭は法廷での証言を求められる。
が、しかし、証言の際、弁護側からその直前の行動について突っ込まれるかもしれない。
なにせ、退勤時間と目撃証言の時間まで、2時間もの隔たりがある。

疚しいところが無ければ何も問題ない、とは言い切れない昨今の世情です。
若い女性教諭が思春期真っただ中の男子中学生と、他には誰もいない狭い密室で二人きり。
おまけに女性教諭側はその男子生徒のことを「憎からず思っていた」。
(こういう時に生徒側の心情が語られることが少ないのは、言わずもがな、だからでしょうか。)

冠城の同期にして被疑者の有罪率「100%の女」である検事、倉田は、弁護側の反対尋問について言及します。
疚しいところのある女性教諭は証言を拒否せざるを得ない。
しかしそこですかさず倉田検事は女性の証言を誘導して変えさせます。
それが警察で行った証言と法廷で行った証言の、微妙な違いとなりました。



肝心の証言内容の違いについてです。
違いは、教諭が被疑者を目撃した場所でした。
最初、警察で証言した際の目撃場所は薄暗く、敏腕弁護士であれば、被疑者と目撃した人物が同一であるかどうかを問題視して、有罪を避けられたかもしれない、というのが右京さんの見立てです。
一方、法廷で行われた証言の目撃場所は明るく、見間違えることはまずないだろうということでした。

この点から冠城は、倉田検事が自分の「100%の女」という経歴に傷を付けさせないために証言を変えさせたのだと考えます。
ちなみにこの目撃場所の変更は、女性教諭にとっては、事件現場である公園に行く前、近所の商店街でウィンドウショッピングをしていたという名目を与えるそうなんですが、どうなんでしょうか。
商店街の監視カメラでも調べられたら一発でバレそうですね。
ああそうそう、監視カメラと言えば、公園の監視カメラに被疑者らしき男が映っていて、だからこそ教諭の証言が肝だったわけなんですが。
弁護側にスポットライトを当てたドラマを作るとするなら、まず間違いなく証言の信憑性、ひいては女性教諭の人間性を貶めに行きますよね。
他に有力な証拠は無いそうなので。
まあたらればの話は置いといて、結局、事件の背景そのものを疑い始めた特命係の活躍により、殺人事件の共犯者が浮かび上がり、審議はやり直しに。



さて、いつも通り好き勝手に動き回って、特命係はついに、倉田検事が証言を変えさせた真の理由に辿り着きます。
実は、女性教諭と男子生徒がいたカラオケボックスのすぐそばに、倉田検事が通う心療内科があったのです。
競争足の引っ張り合いの激しい男社会である法曹界で、出世頭の倉田検事は隙を見せることが出来ません。
もし万が一、女性教諭の証言の裏を取ろうと弁護側が動き回って、偶然自分が心療内科に通っていることを突き止められてしまったら。
馬鹿げた空想だとしながらも、倉田検事は自らの保身のために、女性教諭の証言を変えさせてしまいます。



時効警察、じゃなかった、特命係の捜査により自らの行動を暴かれた倉田検事は、特命係しかその真相、真意を知らないにも関わらず、辞職を選びます。
右京さんは(心療内科に通う人間に対する)偏見と闘う覚悟を持つべきだったと言いました。
僕は、倉田が検事を辞めるのは、検事というか、自らの正義感を貫けなくなったからだと思いました。
が、今思うと、これは潔さではなくて、逃げなんじゃないかと。
自らの正義を全うする、この信念のためであるなら、倉田検事は証言を変えさせたとしても、辞めるには至らなかったんじゃないのか。
保身からその選択を行った時点で、すでに彼女は折れていた。
であるならば、その後の辞職は敗戦処理というか、貫けないのならいっそ、という、どこか投げやりな気持ちによるものだったのではないか。
今はそう思っています。



で。
でですよ。
冠城は言います。僕たちしか知らないんだから、やめさせる必要はなかったんじゃないかと。
冠城の古巣の上司、日下部さんも、杉下右京を絶対許さないの会への入会を表明します。
それらに対して右京さんは、彼女が自ら選択したことだ、と述べました。
僕もそう思います。
別に右京さんが辞めろと迫ったわけではありません。
外野がどうあれ、彼女がそれを選択したのです。

が、もうちょっと考えてみました。
要するに、冠城も日下部さんも、そんなことはわかっているのです。
真実を突き付けた時、倉田が検事を辞する。
そのことをわかっていて、その上で杉下右京は己の正義をまっとうしたのではないか。
そこを責めているのではないでしょうか。
が、まあたとえその通りだったとしても、それでも右京さんを責めるのは筋違いだと思うんですが。




以下、今回のコメディパート。




次回もお楽しみに!