愚者の能書き

愚か者が愚かなりに考えたことを記録する

社長の話は長いが、僕が要約すると短い。

人生とか、目標とか、ゴールとか

先日の話である。

社長の訓話をまとめると、目標を立てて、それを為し得る事実を積み上げて行けば

良い、ということらしい。

 

社長は、某自己啓発企業のセミナーを受けて「目覚めて」しまった人である。

自己啓発企業では、ミッションコントロールだのコミットメントだの

インテグリティだのの、僕には普通の意味さえよく分からない横文字に

独自の解釈を付けて用語化、自分の人生や感情の「扱い方」を教えている

らしいのだけれど、なんと社長、これを会社のルールに取り込んで

しまったのである。

 

曰く、「未来から作る」。

目標は達成されるという前提の下、達成する日時(現在から見ると未来)を起点として、

今からそこへ向かって行くと、どういう事が起こるか、どうなって行くのかを、

既成の事実として「達成文」なる共同声明のようなものに記述し、

これを社員一同暗記して念仏宜しく毎日のように唱和するのである。

一度コレと決めたら、その目標の日時が訪れるまで、脇目も振らず、

その目標へ向かえ、というのである。

 

その「達成文」が示す未来を実現すべく手を尽くせ、ということで、

積み上げる事実が足りなければ無限に残業させ、

しかもそれは給料に反映されない自助努力となる素敵システムなのだけれど、

今回はその話は置いておく。

社外で働く僕には今のところ関係無いからである。

 

目標を立てる、それ自体は大事だと思うしそれに向かって努力すれば

良いのも分かるのだけれど、その目標が正しいかどうかが容易にはわからず、

自信も持てず、かといって割り切るには切実過ぎて、

だからみんななんとなく正しいっぽい雰囲気の漂っている方向へ、

足並み揃えて輪を乱すな列を崩すな抜け駆けするな、

赤信号もみんなで渡れば怖くない、

と個人個人が無意識のうちにやっているというのが現状じゃないだろうか。

果たしてそれは悪い事なのだろか。

 

がむしゃらに、頑張ってさえいれば儲かる、

というのは高度成長期からバブル崩壊前までの、過去の話、

というのが個人の感想なのか事実なのかはさておき、

色んな事が多様化して、昔程単純に、

アレは良いコレは悪いと割り切れなくなっているのは事実だと思う。

この状態は、ちょうどRPGのダンジョン攻略に似ている。

あっちへ行くとセーブポイントが、こっちへ行くと宝箱が、

そっちへ行くとボス戦イベントが待っていそうだけど、

出現モンスターは強敵ばかりで、全ルート回ってみるわけにもいかず、

実は分岐は全て落とし穴に通じていて落ちると降り出しに戻されたりするので、

この場合の正解は来た道を戻って一つ前の選ばなかった分岐を行くのが

実は正解のパターンかもしれない。

 

別に昔の人だってそれが正解だって分かって努力してたわけじゃねえよ、とか、

正解かどうかは一概に決める事は出来ず同じ結果でも人によって受け取り方は

違うよ、という向きもあるかもしれないが、

そう言い切るには日本という世界はバブル崩壊後からこっち、

いろんなところに屍山血河を作り過ぎた。

どこを向いても死屍累々、明るい未来なんて見えず、

地雷除去作業の様に慎重に慎重に進むのが悪いとはもう言えまい。

なんとなく上手く行っていた様に見えたルートでさえ、

リーマンショックなんてでっかい地雷を踏んで

また数えきれない犠牲者を出したばかりだ。

海外行け、起業しろ、というのは老人の妄言であり、

意識高い系の人たちの幻想である。

少なくとも、僕みたいな、やる気のないぶら下がりの仮面社畜

意識低い系の夢にはならない。

 

じゃあ、と反論する。

目標も立てずなんとなく出来る範囲で出来るだけやってるだけで、

人生上手く行くのか、と言われると、そんな事はない。

少なくとも僕は上手く行ってない。

上手く行っていたら、僕はもう働いていないはずだ。

好きな時に本読んでマンガ読んでアニメ見てドラマ見て

バイクいじってツーリング行って

たまに思い出した様に小説書いているはずである。

 

はっきり言って、僕は働きたくない。

社会への奉仕だの地域への貢献だの自己実現だのは唾棄すべきうんこであって、

僕が欲しいのはもう二度と働かなくても遊んで生きて行けるだけのお金である。

 

サラリーマンの生涯獲得賃金というのは現在およそ2億円らしい。

それだけあれば家族を養う必要があってもなんとかなるんだろう、たぶん。

ということは、別にスーパーカースーパーバイク

でっかい家が欲しいわけではない僕なら、

4億円くらいあれば、たとえ家族を持ったとしてもしたい事だけして

生きて行けるはずである。

 

で、僕の今の給料で、4億円稼ぐには、ざっと単純計算、111年かかるらしい。

このままじゃどうにもならん、というのはよく分かった。

なんとかしないと望む未来が来ないのはわかるのだが、見上げた山がでか過ぎて、

どうやって登れば良いのか分からん。

足下は見えている。

次の、一番小さな目標はどれだ?

転職か? 株か? FXか? 企業か? ギャンブルか? ……犯罪か?

結局、どれが正解かはわからず、

かといって全ルートを試すにはモンスターが強すぎる。

……もしかしたら、現状維持が一番いいのかもしれない!

 

と、こうして僕はまた、週末がやってくるのだけを楽しみに、

週末がやってくるたびに今年の残りが少なくなっていくことに

焦りを覚えるだけの日常へ戻って行ってしまうのだ。

なんとかしなければいけないことだけは分かっているのだが。

 

……ちっとも短くまとまらなかったな。